2015年07月29日

Windows 10リリースに思うこと

今日2015年7月29日はIT業界に係るすべての者にとって記憶に残る日になりそうです。MicrosoftによってWindows 10がリリースされた日だからです。しかも、既存のWindows 7/8/8.1の利用者へはWindows 10は無償アップグレードという形で提供されます。この無償アップグレードは一年間限定の処置で、Mac OS Xのような完全無償配布ではありませんが、それでも、これはいままでのWindowsの配布形態(パッケージ版やOEMライセンスなどすべて有償配布)から大きく踏み出した画期的な施策だと言えます。

インターネット上にはWindows 10 Preview版の使用体験記事が溢れており、いずれもかなり評価が高いようです。早くもWindows 10正式リリース版の評価記事も流れています。

 Windows 10の時代が始まる―間違いなく過去最高のWindows | TechCrunch Japan
 Windows 10使った初日の感想 : ギズモード・ジャパン

Microsoftも自信満々でWindows 10を発表したようですが、はたしてWindows 10のユーザー数はどれくらい伸びるでしょうか。私はこれについてはかなり悲観的な予想をしています。確かにWindows 10は素晴らしいOSなのかもしれませんが、あまりに世に出るのが遅すぎたと思うからです。

最新の調査情報によると、世界累計の出荷台数ベースでのWindows搭載機のシェアは全体の14%位まで低下しているそうです。

 Gartner Says Tablet Sales Continue to Be Slow in 2015

Windowsのシェアがここまで落ちてしまった原因としては、やはりスマホやタブレットの出荷台数が大きく伸びていることが影響しているのでしょう。モバイルデバイスの大半を占めるのは個人ユーザーですが、個人ユーザーにとってWindowsはもはや使い易いOSとは言えません。IT業界とは無縁の一般ユーザーの中で、iOSやAndroidと比較してWindowsの方が使い易いと言う人はほとんど存在しないでしょう。いまだにWindowsを使っているユーザーの大半は個人ではなく企業です。個人ユーザーにとってモバイルデバイスの主流はスマホやタブレットへ移っており、いまだにノートPCをメインに使っている人は少数派です。

ノートPCに限っても、WindowsではなくMacBookを使っている人が増大しています。カフェやファミレスの店内でノートPCを使っている人を見かけるのは日常風景ですが、いまやWindowsよりMacの方がやや多いのではないかと思えるほどです。IT関連イベントでは確実にWindowsよりMacの数の方が上回っています。プログラマが集まる勉強会などのイベントでは7〜8割位がMacだったりします。「もはやデファクト・スタンダードPCはMac」だと言えるほど、プログラマの間ではMacが普及しています。

 最近のMacはなぜWindowsパソコンを上回っているのか - 日経トレンディネット

個人だけでなく企業でも、WindowsからMacへ乗り換える所が増えています。PC/AT互換機の起源となったマシンを生み出したIBMが全社的にMacを導入することを決めたというニュースは有名です(社員にOSの種類を自由に選択させる方式のようですが)。

 IBMの社員がMacBookを使う時代になりました : ギズモード・ジャパン
 Following Apple partnership, IBM now offering employees Macs for the first time | 9to5Mac
 IBM、従業員向けにMacBookを5万台導入予定 - iPhone Mania
 IBM gives workers choice between Macs or PCs, plans to deploy 50,000 Apple MacBooks

アメリカのIT業界や大学でのMacの普及率の高さは異常なほどです。IT関連イベントや大学の授業ではMacだらけの風景が当たり前になっており、IT・Web系のスタートアップ企業ではほぼ例外なくMacしか使っていません。

 Macが合衆国のPC市場で過去最高のマーケットシェアを達成 | TechCrunch Japan
 Mac Achieves Highest U.S. PC Market Share Ever In Q3 2014 According To IDC | TechCrunch
 Life is beautiful: アメリカの大学の典型的な授業風景
 【商用可・無料】スタートアップ系の雰囲気を再現した写真素材サイト「STARTUP STOCK PHOTOS」 | ビットエーブログ - 株式会社BITA
 Startup Stock Photos

Microsoftが実施したWindows 10のメディア向け発表会でさえMacだらけという有り様です。

 「Windows10の発表会に来てみたら…MacBookの海になっていた」矛盾を感じる写真:らばQ
 A sea of Macbooks at the Windows 10 unveiling - Imgur

また、日本国内の地方自治体でも、Linuxなどのオーブンソース・ソフトウェアを利用して情報基盤システムを構築する動きが活発になっています。Microsoftという一企業のソフトウェアに依存する形で公的な情報基盤システムを構築することは高いリスクを伴うので、これを回避しようとするのは当然の動きだと言えます。このように、モバイルデバイスだけでなくPC利用シーンでもWindows離れは大きな流れになっています。Windows 10がどんなに素晴らしいOSであっても、もはやこの流れを変えるのは難しいでしょう。

ここまでWindowsのシェアが落ちているので、当然ソフトウェア開発者はWindowsへの対応優先度を下げています。私の周りでも、Windowsのソフト開発に携わっている人は片手で数えるられるほどに少なくなっています。仕事でWindowsソフトの開発をやっている人はまだそこそこいますが、趣味のプログラミングでWindows用ソフトを開発しているプログラマは一人も存在しません。プログラマにとって、Windowsは魅力を感じられないOSになってしまっているからでしょう(特に若手プログラマがWindowsソフト開発を毛嫌いする傾向が強いです。Windowsに将来性がないことを敏感に感じているからでしょう)。Windowsのシェアが大きく回復しないかぎり、この状況が変ることはないでしょう。個人ユーザーのライフスタイルにマッチした魅力的なアプリが少ないことも、Windows離れを引き起こしている原因です。Windows StoreでWindowsデバイス向けのアプリが配布されていますが、App StoreやGoogle Playと比較すると悲惨な状況です。Windows 10がどんなに素晴らしくても、アプリ配布のエコシステムの成長なしにその未来を語ることはできません。エコシステムの構築という面でもWindowsはiOSやAndroidに大きく引き離されています。

これからのWindowsの命運は、Windows 10のユーザー数がどれくらい伸びるかにかかっていると言っても良いでしょう。Microsoft社の予想通りにWindows 10のユーザーが増えれば良いですが、もしその予想より大きく下回った場合は、Windowsは一気に終焉へと向かうかもしれません。無償アップグレード期間中にWindows 10のユーザー数がどれくらい増えるかが勝負所となりそうです。Windowsのシェアが大きく回復すれば、ソフトウェア開発企業もWindowsへの対応優先度を上げざるをえなくなりますし、個人のプログラマもWindowsへ再び目を向けるようになるでしょう。しかし、現状Windowsユーザーの大半は個人ではなく企業です。企業では、PCの搭載OSのバージョンを変えることを避ける傾向が強いです。現在企業内のPCで使われているのはほとんどWindows 7ですが、これをWindows 10へアップグレードする需要がどれくらいあるのか疑問を感じざるをえません。多分大半の企業はすぐにはWindows 10へアップグレードを行わないで、しばらく様子見の姿勢を続けるでしょう。私がWindows 10のユーザー数が大きく伸びないと予測しているのは、上記のようなWindowsを取り巻く状況が改善へ向かうとは思えないからです。

ちなみに、既存のWindows 7/8/8.1ユーザー向けのWindows 10無償アップグレードは「Get Windows 10」という予約アプリ経由で行う方式になるそうです。

 Windows 10 にアップグレードする方法 - マイクロソフト

本日(7/29)以降Windows Updateを適用すると、タスクバー上にこのアプリの通知アイコンが表示されるようになるらしいです。このアプリを使って無償アップグレード予約の登録を行うと、Windows 10アップグレードの準備が整った時点で、デスクトップ上にその通知ウィンドウが表示されるそうです。

私はいまWindows PCを3台所有しており、いずれもWindows 7が搭載されていますが、これらをWindows 10へアップグレードする気はまったくありません。私にとってWindows PCはあくまで仕事用なので、わざわざOSをWindows 10に変える必要性がないからです。下のページにWindows 10への無償アップグレードを抑止する方法が記載されているのを見つけたので、この方法をすべてのWindows PCへ適用してしまいました。

 [企業ユーザー向け] Windows Update からの Windows 10 への無償アップグレードを管理する方法 - Ask CORE - Site Home - TechNet Blogs

Windows 10のDSP版は8/1から、パッケージ版は8/16から販売が始まるそうです。海外メーカーのWindows 10搭載PCは本日(7/29)から発売されているようですが、国内メーカーのWindows 10搭載PCはこれから順次発売されて、各メーカーの機種が一通り揃うのは10月頃になりそうです。こちらの方はかなり販売数が伸びるのではないかと予想しています。新しいもの好きのユーザーは相当数いると思うからです。Windows 95以来のWindows特需現象が起きるかもしれません。ちなみに、私が最後に買ったWindows PCは2012年5月に入手したAcer Aspire S3-951-F34という奴です。これ以降Windows PCは一台も買っていませんし、これからも買うつもりはありません。Macで十分に満足していますし、仕事ならともかくプライベートでWindowsを使う気にはなれないからです。プログラマが使うOSとして、WindowsよりMac OS Xの方が圧倒的に優れていると思っていることも大きな理由です。

今後のIT業界の状況がどのように変わろうとも、今回のWindows 10のリリースは世の中に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。Windowsの歴史の大部分はPCの歴史とも重なっているので、Windows 10の登場によってPCの利用形態が大きく変化するかもしれません。1992年リリースのWindows 3.1、1995年リリースのWindows 95もその後のPCの利用形態を大きく変えました。もしかすると、10年後には「Personal Computer」という呼び名そのものが無くなってしまっている可能性もあります。個人ユーザーは無視することもできますが、IT企業にとってはWindows 10への対応をまったく行わない訳にはいきません。Windows 10のリリースはIT業界にとって大きな転換点となる出来事になりそうです。

【2015/08/02 追記】

MicrosoftはWindows 10を「最後のWindows」と呼んでいます。それは、今後Windowsのメジャー・アップグレードは行わず、新規機能の追加も含んで、すべてのアップグレードをWindows Update経由で配信しする予定だからです。つまり、Microsoftがいままで続けてきたパッケージ版による販売はWindows 10が最後になります。

 最後のWindowsとなる「Windows10」今後Microsoftはどこで利益を上げるのか | FUTURUS(フトゥールス)

私は文字通りの意味でWindows 10が「最後のWindows」になるだろうと言ってやりたいです。予言という訳ではありませんが、私は「2020〜2021年頃にWindowsは終焉を迎える」と思っているからです。

いまのWindowsを取り巻く状況は日本の幕末時代に良く似ているように思えます。1853年(嘉永6年)の黒船来航から1867年(慶応3年)の大政奉還まで、たった14年間で日本の歴史は怒涛のごとく変化しました。Windowsを江戸幕府に例えるなら、iPhoneの登場が黒船来航に相当するでしょう。iPhoneが登場したのは2007年なので、この例えをそのまま適用すると、Windowsの終焉は2021年になります。2021年はいまから6年後ですが、Windows 10のユーザー数が予想より伸びずに、さらにWindows離れが加速すれば、MicrosoftがWindowsの開発終了を決意するまでに丁度良い感じのタイムスパンではないかという気がします。

私には、もはや「Personal Computer」という存在そのものが時代遅れになるつつあるように思えてなりません。1977年にCommodore、Apple、Tandy RadioShackの各社から相次いで発売された、ケースに収納された一体型のコンピュータをPersonal Computerの起源とするなら、それから37年経っています。Personal Computerの機能や性能は大きく変わっていますが、基本的な構成(キーボードとモニタの存在)や外形は原型からそれほど変化していません。もうそろそろPersonal Computerに置き換わる新時代の情報端末デバイスが登場しても良い頃です。「スマホやタブレットがそれだ」いう人もいるでしょうが、私にはどうもそうだとは思えません。スマホやタブレットは基本的に情報出力専用のデバイスだからです。キーボードがついているからノートPCを使っているという人は多いと思いますが、情報入力デバイスとしてのノートPCの良さとタブレットの手軽さを兼ね備えた新しいデバイスを求めているユーザーは多いと思います。Microsoftなら「Surfaceこそまさにそれだ」と言うでしょうが、私にはSurfaceはいまいち違うんじゃないかと思っています。SurfaceはノートPCにタブレット的な機能を無理やり追加したような造りに見えるからです(OSがWindowsと大した違いがないWindows RTだという点も気に入らないです)。アプローチとしては逆のような気がしており、タブレットにノートPCの良さを追加する方が正しい方向性のように思えます。ペンによる手書き入力デバイスを研究している企業も多いですが、それも少し違うような気がします。文章では上手く説明できないのですが、キーボードとタッチパネルの両方の良さを兼ね備えた入力デバイスの登場が待ち望まれているように思えます。アニメに良く登場するシーンで説明します。腕時計型デバイスから仮想スクリーンがポップアップして、モニタとタッチパネルを兼ねているシーン。そして、机上などにキーボードの画像イメージを投影して仮想キーボードとして使うシーンです。この2つのシーンが合体した感じの物を想像しています。どちらもSFチックなシーンに見えますが、もうそろそろこんなテバイスが登場しても良い頃です。これから10年以内に、こういうデバイスが実験段階から実用段階に移行しそうな予感がしています。タッチパネルに代わる新しい入力デバイスが登場したときが、新時代Personal Computerの幕開けになるとじゃんないかと想像しています。
タグ:Windows 10
posted by とみやん at 12:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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